コース案内

乳頭山のコース

コース全図
凡例

縦走コース

縦走コース
凡例
笹森山・湯森山・笊森山
笹森山・湯森山・笊森山
ヒメシャクナゲ
ヒメシャクナゲ
初夏の千沼ヶ原
初夏の千沼ヶ原
ヒナザクラ
ヒナザクラ
乳頭山山頂
乳頭山山頂
焼森から観た田代平(避難小屋)
焼森から観た田代平(避難小屋)
笊森山からの千沼ヶ原
笊森山からの千沼ヶ原
タチギボウシ
タチギボウシ
縦走コース 詳細

笹森山から湯森山をめざす

秋田駒ヶ岳から千沼ヶ原を経て乳頭山にいたる縦走コースは秋田と岩手の県境稜線上を歩く爽快さ、そして湿原や池塘に咲く様々な花との出会いに感動する魅力的なコースである。
八合目登山口から千沼ヶ原へ、と書かれた案内板にしたがって、水場の横を歩き出す。いったん下って赤倉沢を渡り、笹森山を目指す。丸太で作られた階段を上がっていくと両側にはキンコウカやイワショウブ、イワイチョウといった湿性植物が目を楽しませてくれる。ここのニッコウキスゲも趣があって良い。階段が終わると間もなく道は二つに分かれ、左は笹森山頂上へ、右は湯森山へのルートになる。笹森頂上へは五分ほど、名前のとおり笹に囲まれている。ベンチが置かれているので小休止すればよい。ここから湯森山へ向かうのだが、歩き出して間もなく分岐がある。左は休暇村乳頭温泉郷への道で、湯森山へは直進である。少し下り、そして緩やかな上り、ウラジロヨウラクやナナカマドに覆われた道を三、四〇分行けば開けた湯森山頂上につく。ここで焼森からの縦走路と合流する。

ヒメシャクナゲ ムシトリスミレに疲れを忘れ

湯森山から翻ると、見慣れた姿とは違った荒々しい駒ヶ岳を眺めることができる。黒褐色の焼森や阿弥陀池小屋も確認できる。湯森山頂上付近にはイソツツジやヨツバシオガマが多い。湯森山から笊森山にむかう。ここから先は少し疲れることを覚悟してほしい。急登はないがだらだらした登りと、初めての方には笊森山頂上かと思わせるようなピークが幾つもあって、たいした高低ではないわりに体力を使う。真夏などは特に無理せずのんびり行こう。
湯森山から歩を進めると視界が開け、木道が敷かれた湿原に出る。熊見平という。ここにはワタスゲ、キンコウカ、サワランなどの他、ヒメシャクナゲやムシトリスミレといった可憐な湿性を好む花が咲いている。ヒメシャクナゲを初めて見た人は、そのあまりの可愛さに誰もが声を上げる。木道のすぐそばに咲いているが気づかず通り過ぎて行く人も多い。しばらく行くと木道はいったん終わり、ハイマツに囲まれ巨岩が突き出した地点に着く。宿ヶ岩と呼ばれるところだ。一休みするにはちょうどよい。
宿ヶ岩を過ぎるとまた木道になり、少しの間湿原の中を行く。やがて岩礫の道になり、幾つかピークを越えると開けた山頂の笊森山に到着である。

憧れの大池塘群、千沼ヶ原へ

笊森山頂上に立って振り返ると、秋田駒ヶ岳は遥かに遠くなり、かわって北東に岩手山の威容が迫ってくる。乳頭山も目前である。ここから最近トレッカーの人気を集めている千沼ヶ原へと向かう。千沼ヶ原は昭和二九年(一九五四年)、岩手山山岳会によって発見されたもので、命名もこの時なされた。無数の池塘がつくりだす神秘的な風景に、一度ここを訪れたものならきっと魅了されるだろう。笊森山の頂から少し北に下ると道は二手に分かれる。左は乳頭山に直行する道なので右の道を進む。間もなく右手に残雪が見えるだろう。八月頃まで残っている。こうした雪解け水を集めた沢で水を補給し、木道の上をオオシラビソ(別名アオモリトドマツ)の枝をかきあげるようにして進むと千沼ヶ原である。
木道を進み存分に大池塘群を楽しんでもらいたいが、くれぐれも木道から外れないようにして欲しい。千沼ヶ原にはミツガシワやサワギキョウ、モウセンゴケ、イワショウブなどの湿原植物やミヤマリンドウ、ニッコウキスゲなども見ることが出来る。
十分楽しんだらいよいよ乳頭山へ向かおう。

乳頭山山頂をめざして

千沼ヶ原の木道を引き返し、二俣の分岐を右に進む。途中二つほど沢を渡るが一人では越えにくい箇所があるので誰かに手を借りてほしい。このあたりは遅くまで雪が残り、融雪を待ってヒナザクラが咲く。作家・田中澄江さんが著書『花の百名山』の中で『ヒナザクラの谷とも名づけて、できれば満月の今宵、一夜を花に埋もれてすごしたい』と絶賛したところである。ムラサキヤシオツツジも遅くまで楽しむことが出来る。谷を越えれば五分ほどで笊森山からの稜線登山道にでる。 ここから乳頭山の頂までは四〇分の道のりだ。ハクサンチドリやミネウスユキソウ、ハクサンシャジン、ハクサンフウロが咲く道である。頂上の下まで来るとその南壁はほぼ垂直に切り立ち、人間を威圧する。岩礫の道を一歩一歩進むと頂上の少し手前で滝ノ上温泉から来る道と合流し、やがて鉄製の方位盤が置かれた頂上到着である。方位盤を見ながら360度の大パノラマを楽しもう。ただ輝石安山岩の板状節理が風化によって脆くなっているため南東側には近づかないほうが良い。こんな岩だらけのところでもイワウメやショウジョウバカマがしっかりと根を下ろして花をつけているからすごい。
乳頭山からの眺望を存分に楽しんだら、この縦走もフィナーレをむかえる。下山ルートは頂上直下の分岐を左に進んで一本松から黒湯温泉口へ向かうルートと、分岐を右に進み田代平の木道分岐を左折して孫六温泉口に向かうルート、さらに田代平の木道分岐を直進して蟹場温泉口に出るルートがある。